摂食障害(拒食症・過食症)の治療成功のポイント

治療の初期に見るべき視点は、「病気の心」(*)です。

「本当の自分の心」VS「病気の心」のバランスを見極めることです。

治療としては、とにかく、例え僅かな差であっても、
「本当の自分の心」に基づく行動を
「病気の心」より優勢な状態にすることが、最大のポイントです。

どのような治療を試みようとも、
「病気の心」が優勢の状態である限り、
必ずと言っていいほどにその治療は失敗します。

表面的には治療に取り組んでいるように見えても、
行き詰まり、元のレベルに戻ってしまうこともしばしばです。

では、どのようにして病気の心を遮断するのか。
次の順番で試みていくことが重要です。

*ちーひめ注:

病気の心には以下のようなものがあります。

@ボディイメージの歪み
A肥満恐怖から生まれてくる思い
B飢餓状態のときの精神状態
C拒食症のときのおなかの感覚
D湖面の波紋の原理

1、個人での体重測定を止める:摂食障害(拒食症・過食症)の病気の心を遮断する治療方法の第一歩

これは、本人がひとりで体重測定することを止めるという意味です。
治療では、もちろん体重測定を行います。

何故、最初に、体重測定を止めることを行うのか。

それは、体重測定こそが最も「病気の心」を強め、
「本当の自分の心」を弱めるものだからです。

治療者によって、
診察をどのように捉えているかは異なると思いますが、
摂食障害(拒食症・過食症)の治療における診察は、
「本当の自分の心」を強め、
わずかでも「病気の心」より優勢な状態にする
ことにその主たる目的があります。

ですから、診察では、心理教育によって、
治療の動機付けを高め、
「本当の自分の心」を「病気の心」より優勢な状態として、
例えば、「今週は、3食をきちんと食べよう」という課題を
実践できるようにと導くわけです。

しかし、そうした試みも、もし家で体重測定を行うと、
一瞬で、無に帰してしまいます。

何故なら、
体重測定でわずかでも体重が増えているという事実を見た瞬間、

「体重が増えてしまったあ。すごく太ってしまった。どうしよう」
「このままブクブク、ブクブク太り続けるんじゃないだろうか」
という病気の心が刺激され、強化されるからです。

診察時には、
「よし、病気を治すためにしっかりと3食を食べよう」と決意した
その思いは縮小し、その後は、いつものように食べられなかったり、
吐いたりする毎日が始まるのです。

治療にとって最大の敵は、体重測定です。

体重測定を止めることこそ第一にすべきことなのです。

具体的には、単に「体重測定を止める」と約束するだけではダメです。

癖になってしまった体重測定は、
体重計がある限り、その誘惑に負けてしまうものです。

家族の誰かに、体重計を隠してもらうか、
あるいは捨ててもらうことです。

実際、本人たちはその意味をよく知っています。

2、嘔吐を止める:摂食障害(拒食症・過食症)の病気の心を遮断する治療方法の第2番目

次にやるべきことは、嘔吐を止めることです。

なぜ、嘔吐を止めることが二番目に来るのか。

それは、いくら食事をとったとしても、
嘔吐していれば意味がないからです。

食事量と体重増加の相関関係を見ることも出来ませんし、
そうすると様々な場面で治療に支障をきたします。

また、嘔吐がひどければ、低カリウム血症をきたし、
身体的に危険なこともあります。

ですから、この嘔吐を止めることがまずは優先されるのです。

嘔吐を止めるのは、難しいことのように思いますが、
本人の治療への動機付けが十分であれば、意外に実践できるものです。

ポイントは、
いかにして治療への動機付けを高め、安心感を与えるか
というところにあります。

多くの場合、嘔吐は、過食してしまったことに耐え切れず、
このままでは太ってしまうという思いから行います。

それがいつの間にか習慣性になって行ってしまいます。
しかし、治療者に、最終的に過食を止めることができる
という治療の見通しがあり、それを本人が納得できれば、
嘔吐を止める動機付けは高まり、嘔吐を止めることが出来ます。

それでも、どうしても嘔吐を止められない場合には、
食事を中止し、栄養剤だけの食事とします。

そして、栄養剤を飲んだ後は、家であれば、
家族と一緒に1時間過ごしてもらいます。
入院している場合は、
スタッフの目の届くデイルームで1時間過ごしてもらいます。

もちろん、この間に(嘔吐することが可能な)
トイレに行くことは許可しません。

トイレはあらかじめ、食事前に行ってもらうようにします。
この方法によって、殆どの場合、一旦は嘔吐を止めることが出来ます。

3、3食を取る:摂食障害(拒食症・過食症)の病気の心を遮断する治療法の3番目

嘔吐を止めることが出来れば、
次は朝・昼・夕の3食をとってもらうことにトライします。

拒食症の場合、
とにかく何でも好きなように食べて体重を回復すればいい
と考えてしまうこともありますが、
このやり方は様々な理由から失敗する可能性が高いと思われます。

きちんと3食をとることから始めてほしいと思います。

過食症の場合も同様です。
3食をきちんととることができて、
栄養状態が満ちてきて、そのバランスがとれてくると、
からだの問題からきている過食は落ち着いてきます。

3食を取るポイント:摂食障害(拒食症・過食症)の治療方法

3食をとるにあたっては、いくつかポイントがあります。

@必ず決められた食事量を全量摂取すること
A食事の内容をあっさりとしたものなどに偏(かたよ)らないこと
B母親らが食事を作る場合、その料理に一切の注文をつけないこと

治療を成功に導くか否かのポイントはいくつかありますが、

@はそのひとつのポイントです。

摂食障害の食事療法において、
「今まで殆ど食べられなかったけれど、
今日は半分食べられたからよかった」
という考えは殆ど通用しません。

この場合、
半分食べられるようになったということは喜ばしいことです。
しかし、問題は残り半分を食べられなかったということであり、
そこに病気の心があります。

病気の心には、湖面の波紋の原理が作用しています。

湖面の波紋の原理が作用しているということは、
この半分は再びその量が増え、
いずれは殆ど食べられない状態に戻っていきます。

一時的には喜ばしく見えるこの状態も、
その先を見通すなら、極めて厳しい状態なのです。

「病気の心」は、完全な遮断によってのみ、
治すことが出来るのです。

Aについては、漠然と食事をとるようにと指示すれば、
病気の心がある限り、必ずといっていいほど、
コンニャクや海草のような油気のない
あっさりしたものばかりを選んで食べるからです。

何故、それではいけないのか。

ひとつには、揚げ物などの油物を避けていると、
その栄養バランスが欠けるために、
油物などの高カロリーなものに対する欲求や、
あるいはそれに代わって甘いものへの欲求が高まり、
過食を生じる可能性が出てくるからです。

過食欲求は、低栄養状態であるか、
あるいは栄養の偏りで不足したものがあるときに起こってきます。

よって、過食症になることを避けるためにも、
油物をとる必要があります。

もうひとつの理由は、
その油物を避ける心こそ病気の心だからです。
治療で治すのは、病気の心です。

いざとなれば平気で油物を食べられるというのであれば、
むしろ油物をとらなくてもかまいません。

しかし、油物が怖くて避けてしまうのであれば、
その心こそが病気の心であり、その病気の心を治すために、
意識的に油物をとり、
病気の心に打ち勝つ行動をとっていくことが必要なのです。

Bも重要なポイントです。

病気の心があると、どうしても食事のメニューが気になります。
そのため、何かと理由をつけては、
母親らの作る食事メニューに注文をつけようとします。
しかし、これに合わせてはなりません。

何度も述べているように、病気の心に合わせれば、
病気が強まるだけです。

入院治療でも、
摂食障害の人たちはいろいろな食事に関する注文をつけてきます。
しかし、病気になる以前より苦手なもの以外は、
全て食べてもらいます。

また、飲み物は、水か、お茶程度に限り、
清涼飲料水やコーヒーなどは禁止します。

清涼飲料水を好むのは、
おそらく低栄養状態からくる過食欲求を満たすためだからです。

また、何故かコーヒーなどの嗜好品を異様に好むのも、
病気の症状だからです。

ちーひめ注:
Aについては、泉先生のもうひとつのサイト、
心の病について考えよう、のなかに関連記事があります。
興味がある方は、ここをクリックしてみてください
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